製造業のF社は受注生産を行っており、製品別に五つの事業部がある。 また、これらの事業部とは別に、営業本部が営業活動を行っている。 F社では、事業部別の業績を把握するために業績管理システムを構築し、運用している。 業績管理システムの機能改修を昨年度行ったので、その後の運用状況について、監査室による監査を実施することになった。
〔業績管理システムの概要〕
業績管理システムは、部門業績サブシステム及び営業支援サブシステムで構成されている。 部門業績サブシステムでは、事業部別の受注・売上・利益の計画・実績・見通しなどの業績データを管理している。一方、営業支援サブシステムでは、個々の営業案件を管理している。
従来、部門業績サブシステムによる業績見通し情報は、各事業部が、それぞれ管理している資料に基づいて、毎月入力していたが、実績が業績見通しと大きく異なることがあった。 そこで、昨年度、業績見通しの精度の向上を図るために、業績管理システムを改修した。 現在は、営業支援サブシステムの営業案件データを基に、週次で業績を見通しを算出している。 改修後の業績管理システムの概要は、図1のとおりである。
〔予備調査の結果〕
監査室は、予備調査として業績管理システムの仕様書を閲覧した後、関係者に対してヒアリングを行った。調査結果は次のとおりである。
(1) 営業支援サブシステムでの営業案件データの入力
① システム改修に当たり、営業担当者が、既存の営業案件データを営業支援サブシステムに入力する。 入力するデータ項目は、"案件番号"、"受注番号"、"案件名称"、"担当営業部"、"担当事業部"、"受注確度"、"営業状況"、"受注年月"、"売上年月"、"受注金額"などである。
② 当年度内の営業活動によって、既存案件の内容が変化したり、新規案件が発生したりすると、営業担当者がその都度、営業支援サブシステムに案件状況を入力する。 入力期限は毎週末であるが、営業担当者が多忙で入力が遅くなる場合もある。
③ 案件の"受注確度"は、A~Eの五つに区分して入力し、確度Aは受注確定を意味する。 しかし、営業本部では、これまで"受注確度"よりも顧客との打合せ内容などを記載した"営業状況"の内容を重視していた。 したがって、営業支援サブシステムでは、受注管理表に受注確度別の集計は出力していない。
④ 営業担当者による案件状況の入力結果は、営業部の課長が承認した後、確定する。
(2) 営業支援サブシステムから部門業績サブシステムへの営業案件データの取込み
① 情報システム部のシステム運用担当者は、週次(週の第一営業日)で、作業手順書に従って営業案件データの取込み作業を行っている。 作業手順書には、営業支援サブシステムの営業案件データの出力や、部門業績サブシステムへの営業案件データの取込みなどの実施すべき作業が記載されている。
② 営業案件データと事業部案件データは、データ項目とデータ形式が異なるので、部門業績サブシステムに取り込むときには、データ変換表を利用して自動変換している。 データ変換表は、組織、製品の変更があると、システム運用担当者が、随時更新している。
③ システム運用担当者は、取込み作業終了後に、実施した作業と作業結果をシステム業務記録簿に記入する。
④ 事業部案件データを基に事業部案件一覧票が作成され、各事業部の関係者が作業計画立案などに利用している。
(3) 部門業績サブシステムでの事業部案件データの利用
① 部門業績サブシステムでは、事業部案件データを受注確度別に集計し、受注確度別に定めた確率を掛け合わせて、業績データ(事業部別の受注・売上・利益の見通しなど)を作成している。
② 業績データを基に、週次で業績管理表が作成され、各事業部が内容を確認するとともに、月次で経営企画室が経営会議で報告している。
〔本調査の実施〕
監査室は、予備調査の結果を基に、データ品質の確保と業績管理システムの改修目的達成の観点から、業務の流れに従ってリスクと監査要点を検討し、"リスクと監査要点一覧"にまとめた。 その抜粋は、表1のとおりである。
表1 リスクと監査要点一覧の業務の流れ
表1中の項番2,3及び5のb、c及びeに入れる適切な字句を、 b、cは5字以内で、eは、10字以内でそれぞれ答えよ。
bには「入力期限」が入ります!
表1 リスクと監査要点一覧の業務の流れ「データ入力」頁番2のリスクをみると
営業案件データが、最新の状況を反映しているか。
とあります。これを踏まえて問題文をみると
既存案件の内容が変化したり、新規案件が発生したりすると、営業担当者がその都度、営業支援サブシステムに案件状況を入力する。入力期限が毎週末であるが、営業担当者が多忙で入力が遅くなる場合もある。
営業案件データの、最新の状況かどうかは「入力期限」が守られているかどうかによります。
従ってbには「入力期限」が入ります!
cには「受注確度」が入ります!
表1 リスクと監査要点一覧の業務の流れ「データ入力」頁番3のリスクをみると
業績見通し算出に必要な信頼できる営業案件データが入力されない
とあります。「業績見通し算出に必要な信頼できる営業案件データ」を念頭に問題文をみると
案件の"受注確度"は、A~Eの五つに区分して入力し、確度Aは受注確定を意味する。しかし、営業本部では、これまで"受注確度"よりも顧客との打ち合わせ内容を記載した"営業状況"の内容を重視していた。
この中で「業績見通し算出に必要なデータ」は受注確度です。受注確度はA~Eの五つに区分できるので、定量化できます。定量化すれば算出が可能です。
「営業状況」は定量化できないので算出ができません。
従って、cには「受注確度」が入ります!
eには「データ変換表」が入ります!
表1 リスクと監査要点一覧の業務の流れ「データ取込み」頁番5のリスクをみると
営業支援サブシステムから部門業績サブシステムに、正確な営業案件データが取り込まれない。
です。
問題文の【予備調査の結果】(2)営業支援サブシステムから部門業績サブシステムへの営業案件データの取込みの②をみると
営業案件データと事業部案件データは、データ項目とデータ形式が異なるので、部門業績サブシステムに取り込むときには、データ変換表を利用して自動変換している。
とあります。
営業案件データの取込み処理のために利用するのは「データ変換表」なので、eには「データ変換表」が入ります!