新会計システム導入に関する監査について、次の記述を読んで、設問1~5に答えよ。
L社は、中堅の総合商社であり、子会社が6社ある。L社及び子会社6社は、長い間、同じ会計システム(以下、旧会計システムという)を利用してきたが、ソフトウェアパッケージをベースにした新会計システムに、2年掛かりで移行させる予定である。ただし、子会社のM社だけは、既に新会計システムを導入して3か月が経過している。
L社の監査室は、L社、及びM社を除く子会社5社が新会計システムの導入に着手する前に、M社の新会計システムに関する運用状況のシステム監査を実施し、検討すべき課題を洗い出すことにした。
〔予備調査の概要〕
新会計システムについて、M社に対する予備調査で入手した情報は、次のとおりである。
1. 伝票入力業務の特徴及び現状
旧会計システムでは、経理部員が手作業で起票し、経理課長の承認印を受けた後、起票者が伝票入力して、仕訳データを生成していた。このため、手作業が多く、紙の帳票も大量に作成されていた。
(1) 新会計システムでの伝票入力業務の特徴及び現状は、次のとおりである。
(2) 新会計システムでは、経費の請求などは各部署で直接伝票を入力することにした。そのために、経理部は各部署に操作手順書を配布し、伝票入力業務説明会を実施した。また、各部署で入力された伝票データ(以下、仮伝票データという)に対して各部署の上司が承認入力を行うことで仕訳データを生成し、請求書などの証ひょう以外に紙は一切使用しないようにした。①新会計システムに承認入力を追加することによって、旧会計システムにおいて不正防止のために経理部が伝票入力後に実施していたコントロールは、不要となった。
(3) 新会計システムでは、各利用者に対し、権限マスタで、伝票の種類(経費請求伝票、支払依頼伝票、振替伝票など)ごとに入力権限と承認権限が付与される。
経理部によると、"各部署で入力された仕訳データの消費税区分、交際費勘定科目などに誤りが散見される"ということであった。
2. 伝票入力業務の手続
新会計システムにおける伝票入力業務の手続は、次のとおりである。
(1) 担当者が入力すると伝票番号が自動採番され、仮伝票データとして登録される。このとき、担当者は証ひょうに伝票番号を記入する。
(2) 承認者が仮伝票データの内容を画面で確認し、適切であれば承認入力を行う。
(3) 承認入力が済むと、仮伝票データから仕訳データが生成され、仮伝票データは削除される。仕訳データには、仮伝票データの入力日と承認日が記録される。
(4) 承認された伝票の証ひょうは、経理部に送られる。
(5) 経理部は、各部署から送られてきた証ひょうを保管する。
3. 仕入販売システムとのインタフェース
M社は、大量の仕入・販売取引を仕入販売システムで処理している。旧会計システムでは、仕入販売システムから出力した月次集計リストに基づいて、経理部が手作業で伝票入力をしていた。これに対し、新会計システム導入後は、夜間バッチ処理で仕入販売システムから会計連携データを生成した後に、経理部員が新会計システムへの"取込処理"を実行するように改良した。
(1) 会計連携データは、システム部が日次の夜間バッチ処理で生成している。会計連携データには、必須項目の他に、各子会社が必要に応じて設定した任意項目が含まれている。これらの項目は仕訳データに引き継がれ、新会計システムの情報として利用される。
(2) 夜間バッチ処理の翌朝、経理部員が取込処理を実行することで、会計連携データが新会計システムに取り込まれる。
(3) 経理部によると、"新会計システム導入当初には、取込処理の漏れ、及びエラ一発生などによる未完了が発生していた。また、夜間バッチ処理のトラブルで会計連携データが生成されず、前日と同じ会計連携データを取り込んでしまったこともある"ということであった。この対策として、経理部では、当月から取込処理の実施前と実施後に追加の手続を実施することにした。
4. 管理資料
新会計システムでは、各部署の利用者が自ら分析ツールを利用して仕訳データの抽出・集計が可能であることから、効果的な管理資料が作成でき、各部署での会計情報の利用増加が期待されていた。しかし、一部の利用者からは、"新会計システムでは仕入・販売取引に関する情報が不足しており、必要な分析ができない"という意見があった。
〔本調査の計画〕
L社の監査室では、予備調査の情報に基づいて監査項目を検討し、本調査の監査手続を表1にまとめた。
表1 本調査の監査手続(抜粋)
項番 | 監査項目 | 監査手続 |
1 | 伝票入力業務が正確・適時に行われているか。 |
①各部署の承認者が伝票の正確性をどのうように確認しているか、複数の承認者に質問する。 ②各部署で直接伝票を入力することから、各部署の承認者が伝票の正確性についてチェックできるように、適切な内容のaが実施されたかどうかを確かめる。 ③仕訳データの仮伝票データの入力日と承認日の比較、及びbのcと監査実施日の比較を行って、承認入力の適時性について分析する。 |
2 | 伝票入力業務の不正が防止されているか。 | ①職務分離の観点から、承認者にdが設定されていないことを確かめる。 |
3 | 取込処理が適切に実行されているか。 |
①処理前にeの結果をチェックしているかどうかを確かめる。 ②処理後にfをチェックしているかどうかを確かめる。 |
4 | 効果的な管理資料が作成されているか。 | ①設計時にgについて適切に検討していたかどうかを確かめる。 |
表1中のdに入れる適切な字句を、5字以内で答えよ。
dの穴埋めです。
dは
表1 本調査の監査手続(抜粋)の項番2
監査項目
伝票入力業務の不正が防止されているか。
監査手続
①職務分離の観点から、承認者にdが設定されていないことを確かめる。
にあります。
伝票入力業務の不正防止のため、職務分離の観点から、承認者に設定されているものです。
どのような権限があるのでしょうか?
問題文を見ると
1. 伝票入力業務の特徴及び現状
(3) 新会計システムでは、各利用者に対し、権限マスタで、伝票の種類(経費請求伝票、支払依頼伝票、振替伝票など)ごとに入力権限と承認権限が付与される。
伝票入力業務を考慮すると「入力権限」と考えられます。
従って、dは「入力権限(IPA公式解答)」です!
問5 ネットワーク 業務経験が乏しいので差し控えます。